審査基準って住んでる場所で違う?

GI NOTE 自社ローン

監修者・ライター情報

大野修平

統括リーダー

 

自社クレジットの審査基準の考え方

自社クレジットを導入する際、非常に重要になるのが「どのような基準で審査するか」です。

自社クレジットでは、信販会社へ審査を任せるのではなく、自社で定めた基準をもとに契約の可否や利用可能額などを判断します。

そのため、

「年収○万円以上なら可」

「勤続○年以上なら可」

といった一律の条件だけで判断するのではなく、申込者の現在の支払い能力や生活状況などを総合的に見ながら、継続して支払える契約なのかを判断することが重要です。

さらに、自社クレジットの審査を考えるうえで見落とされやすいのが地域性です。

東京や大阪などの都市部と、公共交通機関が限られる地方では、同じ自動車を購入する場合でも、その人にとっての「車の必要性」が大きく異なります。

この記事では、自社クレジットにおける基本的な審査の考え方と、なぜ都市部と地方で審査基準の考え方を変える必要があるのかについて解説します。

自社クレジットの審査で重要なのは「現在の支払い能力」

自社クレジットの審査を設計するときに基本となるのが、

「この契約者は最後まで継続して支払えるのか」

という考え方です。

自社クレジットでは、商品やサービスを先に提供し、その代金を一定期間にわたって回収します。

そのため、販売時点の売上だけを見るのではなく、契約後の支払いが継続できるかまで考えなければなりません。

たとえば審査では、

・現在の収入
・雇用形態
・勤続年数
・居住状況
・家族構成
・毎月の固定支出
・他の支払い状況
・頭金
・希望する契約金額
・支払回数
・毎月の支払額

など、複数の情報から支払い能力を判断する方法が考えられます。

重要なのは、一つの条件だけで機械的に判断しないことです。

年収が高くても毎月の固定支出が大きければ、実際に支払いへ回せる金額は少なくなります。

反対に年収だけを見ると基準を下回っていたとしても、住居費が低い、扶養家族が少ない、安定した勤務を長期間続けているなど、支払いを継続できる材料がある場合もあります。

つまり、自社クレジットの審査では、

「属性」だけではなく「支払いを継続できる根拠」を見る

という考え方が重要になります。

都会と地方で同じ審査基準にするべきなのか

全国で自社クレジットを展開する場合、

「すべての地域で同じ審査基準にした方が公平なのではないか」

という考え方もあります。

しかし、審査の基本ルールを統一することと、地域事情をまったく考慮しないことは別の問題です。

特に自動車の自社クレジットでは、都市部と地方で生活環境が大きく異なります。

東京23区など鉄道やバスが充実している地域では、自動車を所有していなくても通勤や買い物ができる人は少なくありません。

一方、地方では自動車が単なる嗜好品ではなく、

「働くために必要な生活インフラ」

になっているケースがあります。

通勤先まで鉄道がない。

最寄り駅まで数キロある。

勤務時間に利用できるバスがない。

子どもの送迎に車が必要。

買い物や通院にも車が必要。

このような地域では、「車を持つこと」と「収入を維持すること」が密接に関係しています。

したがって、自動車の自社クレジットでは地域の交通事情まで含めて審査を考えることに合理性があります。

地方では「車がないと働けない」という事情がある

地方における自社クレジットを考える際、非常に重要なポイントです。

国土交通省の資料では、地方では日常生活における交通手段として7割近くが自動車を利用しているとされています。

また、三大都市圏では鉄道利用の割合が大きいのに対して、地方都市圏では鉄道利用の割合が小さく、自動車利用の割合が大きいことも示されています。

つまり地方では、

自動車を所有できない
↓
通勤が難しくなる
↓
働ける場所が限定される
↓
収入を維持しにくくなる

という関係が発生する場合があります。

これは自社クレジットの審査を考えるうえで重要なポイントです。

一般的には「自動車を購入する=毎月の支出が増える」と考えます。

しかし地方の場合、

自動車を購入することによって、現在の仕事や収入を維持できる

という逆の側面が存在します。

そのため、自動車の必要性が高い地域では、単純な年収や勤続年数だけではなく、「この車が申込者の就労や収入維持にどの程度必要なのか」という事情も、補助的な判断材料として考える余地があります。

都市部では違うリスクの見方が必要になる

一方、都市部では事情が異なります。

鉄道や地下鉄、バスなど複数の交通手段がある地域では、自動車がなくても通勤を継続できるケースがあります。

さらに都市部では、車両代以外の維持費にも注意が必要です。

駐車場代、任意保険、燃料費、自動車税、車検、メンテナンスなどを合わせると、車両の分割代金とは別に毎月の負担が発生します。

したがって審査時に、

「月々3万円なら支払える」

という判断だけでは不十分な場合があります。

たとえば、

自社クレジット 30,000円
駐車場     25,000円
任意保険    10,000円
燃料・維持費  15,000円

と仮定すると、自動車関連だけで月80,000円です。

※上記金額は審査方法を説明するための仮定であり、実際の費用は地域・車種・契約条件等によって異なります。

自社クレジットの支払額だけなら問題がなくても、自動車を所有するための総負担額で見ると家計を圧迫する可能性があります。

そのため都市部では、車両代金だけではなく、車を所有した後の支出を含めた返済余力を見ることも重要です。

地方だから「審査を甘くする」ということではない

ここは特に誤解してはいけないポイントです。

地方では車の必要性が高いからといって、

「地方の申込者なら審査を甘くしてよい」

という意味ではありません。

審査で最も重要なのは、あくまでも支払いを継続できるかどうかです。

地域性は、その判断をより正確にするための情報の一つです。

たとえば同じ年収300万円、月々30,000円の支払いを希望する2人がいたとしても、

Aさん
「趣味用の2台目として購入する」

Bさん
「勤務先まで公共交通機関がなく、毎日の通勤に使用する」

という状況であれば、自動車の必要性は大きく異なります。

ただし、Bさんの方が必ず審査に通るという意味ではありません。

Bさんについても収入、生活費、既存の支払い、雇用状況などを確認し、30,000円を継続して支払えることが前提です。

地域性や利用目的は、返済能力そのものに代わる基準ではなく、返済継続性を判断するための補足情報として扱うことが重要です。

審査基準は「全国共通」と「地域別」に分けて考える

自社クレジットを複数地域で展開する場合、すべてを店舗担当者の感覚だけで判断すると、審査結果にばらつきが発生します。

そこで、

全国共通の基本審査+地域特性を考慮した補助審査

という考え方が有効です。

全国共通で確認する項目

基本となる支払い能力については、地域に関係なく共通基準を設けます。

たとえば、

・本人確認
・収入
・勤務状況
・勤続期間
・居住状況
・毎月の固定支出
・既存の支払い
・契約金額
・支払回数
・月々の支払額

などです。

ここで基本的な支払い能力を判断します。

地域事情として確認する項目

そのうえで地域によって、

・公共交通機関の状況
・通勤方法
・勤務先までの距離
・自動車の使用目的
・自動車が仕事に必要か
・駐車場など地域特有の維持費

などを補足的に確認します。

こうすることで、全国で審査の基本ルールを維持しながら、地域の実情も反映した審査が可能になります。

自社クレジットでは「スコア」だけで判断しないことも重要

自社クレジットの審査をシステム化すると、

年収○点
勤続年数○点
居住年数○点
雇用形態○点

といったスコアリング方式を採用することがあります。

スコアリングは審査を標準化するうえで有効です。

しかし、数字だけでは把握できない情報もあります。

特に地方では、

「車がなければ現在の勤務を続けられない」

という事情が、返済継続性に関係する場合があります。

そのため、

一次審査:定量的なスコアリング

二次審査:地域性・利用目的などの個別判断

という二段階の審査方法も考えられます。

ただし、人による判断を入れる場合には「担当者の感覚」で結果が変わらないよう、判断理由を記録する仕組みが重要です。

審査で重要なのは「通す・落とす」だけではない

自社クレジットの審査では、

「承認」

「否決」

だけで判断する必要はありません。

たとえば200万円の契約では支払い負担が大きい場合でも、

頭金を増やす。

購入価格を150万円に下げる。

商品や車両を変更する。

支払条件を見直す。

保証条件を追加する。

といった方法によって、支払い可能な契約へ変更できる場合があります。

つまり審査とは、

「この申込者を通すか落とすか」ではなく、「どの条件なら継続して支払える契約になるのか」を判断する作業

とも考えられます。

これは自社で審査基準を設計できる自社クレジットだからこそ重要な考え方です。

審査基準は実績データをもとに改善していく

自社クレジットを長期間運営すると、

「どのような契約で延滞が発生したのか」

というデータが蓄積されます。

たとえば、

地域
年齢
収入
勤続年数
契約金額
頭金
支払回数
月額支払額
商品・車両価格
延滞発生時期
完済率

などです。

これらを分析することで、

「どの条件で延滞率が高くなるのか」

「どの条件なら完済率が高いのか」

という自社独自の傾向が見えてきます。

最初から完璧な審査基準を作ることは困難です。

そのため、

審査 → 契約 → 請求 → 入金 → 延滞 → 完済

までのデータを蓄積し、実際の結果をもとに審査基準を改善していくことが、自社クレジット運営では重要になります。

まとめ|地域性まで考えることが自社クレジットの審査では重要

自社クレジットの審査で最も重要なのは、「現在の支払い能力」と「今後も支払いを継続できる可能性」を適切に判断することです。

そして、自動車など地域によって必要性が大きく変わる商品では、都市部と地方の生活環境の違いも無視できません。

特に地方では、自動車が単なる移動手段ではなく、仕事を続け、収入を維持するために必要な生活インフラになっている場合があります。

一方、都市部では公共交通機関という代替手段が存在する地域が多く、駐車場代などを含めた自動車保有の総負担額にも注意する必要があります。

だからといって「都会は厳しく、地方は甘く」という単純な審査基準にするべきではありません。

基本となる支払い能力の審査は共通化したうえで、地域の交通事情、利用目的、生活環境などを補足情報として加える。

そして、実際の入金・延滞・完済データを蓄積しながら、自社の顧客に適した審査基準へ改善していく。

自社クレジットの審査基準とは、単に「誰を通すか」を決める基準ではなく、「どのような条件なら購入者が無理なく支払い続けられ、事業者も安全に代金を回収できるか」を判断するための仕組みです。

この考え方が、自社クレジットを継続的に運営するうえで重要になります。