自社ローンは金融庁?経済産業省?どちらの管轄なのか
「自社ローンを導入したいが、金融庁への登録は必要なのか?」
「自社ローンは金融サービスなのだから、金融庁の管轄ではないのか?」
自社ローンの導入を検討されている事業者様から、このような質問をいただくことがあります。
結論から説明すると、一般的に「自社ローン」と呼ばれている仕組みが、販売事業者自身が商品やサービスを販売し、その代金を購入者から分割して受け取る「自社割賦」なのであれば、中心となる法律は貸金業法ではなく「割賦販売法」であり、その所管官庁は経済産業省です。
経済産業省の資料でも、割賦販売法上の「割賦販売」について、いわゆる「自社割賦」として明示されています。 経済産業省
一方で、事業者が消費者に対して「お金そのものを貸す」仕組みであれば話は異なります。
貸金業法は、消費者金融などの貸金業者の業務について定める法律であり、こちらは金融庁の所管になります。金融庁も貸金業法について「消費者金融などの貸金業者の業務等について定めている法律」と説明しています。 金融庁
つまり、
「商品・サービスの代金を分割で受け取る」のか、
「消費者にお金を貸す」のか。
ここが、自社ローンを理解するうえで非常に重要なポイントになります。
「ローン」という名称でも、必ずしも貸金業ではない
「自社ローン」という名称から、銀行や消費者金融などが提供するローンと同じものを想像される方も少なくありません。
しかし、一般的な自社ローンでは、販売会社が購入者へ現金を貸し付けるのではなく、
販売会社が自社の商品・サービスを販売し、その代金について分割払いを認める
という取引形態が採用されています。
例えば100万円の商品を販売するとします。
通常販売であれば、購入者から100万円を一括で受け取ります。
一方、自社割賦では、
商品価格100万円
↓
購入者と分割払いの契約
↓
毎月一定額を購入者から受領
という形になります。
販売事業者が購入者へ100万円を現金で貸し付け、その100万円を使って商品を購入してもらっているわけではありません。
あくまでも自社が販売した商品・役務の代金について支払方法を分割化しているという点が重要です。
経済産業省は、消費者信用について「消費者金融」と「販売信用」を区分し、販売信用について割賦販売法の適用対象として整理しています。 経済産業省
自社ローンと金融庁の関係
では、なぜ「自社ローン=金融庁」と考えられやすいのでしょうか。
大きな理由のひとつが「ローン」という名称です。
一般的な銀行ローンや消費者金融では、金融機関や貸金業者が利用者に対して資金を貸し付けます。
このような金銭の貸付けを業として行う場合には、貸金業法など金融関係法令の問題が生じます。
金融庁では、貸金業者に対する監督指針を設け、貸金業者の業務について監督しています。2026年8月17日適用の監督指針についても金融庁が公開しています。 金融庁
したがって、
お金を貸す → 貸金業法・金融庁の領域
という理解が基本になります。
自社割賦は経済産業省が所管する「割賦販売法」の領域
一方、商品やサービスを販売する事業者が、その販売代金を分割して受け取る取引については「割賦販売法」が重要になります。
割賦販売法を所管しているのは経済産業省です。
経済産業省が公表している「割賦販売法(後払信用)の概要」では、規制対象となる取引として、
- 割賦販売
- ローン提携販売
- 信用購入あっせん
などが整理されています。 経済産業省
さらに経済産業省の資料では、明確に**「いわゆる自社割賦(割賦販売)」**という表現が使われています。 経済産業省
そのため、自社ローンを法律上理解する際には、「ローン」という言葉だけを見るのではなく、
実際の契約が「金銭の貸付け」なのか「商品の割賦販売」なのか
を確認する必要があります。
自社ローンなら金融庁への貸金業登録は不要なのか?
ここは慎重な説明が必要です。
適法な自社割賦であるという前提であれば、それだけを理由として「貸金業者」になるわけではありません。
なぜなら、販売事業者が行っているのは基本的に「金銭の貸付け」ではなく、「自社の商品・サービスの販売代金を分割して回収する取引」だからです。
しかし、
「自社ローン」という名称を使っているから貸金業ではない
という判断はできません。
法律上は名称ではなく、実際にどのような取引を行っているのかが重要になります。
例えば第三者が購入代金相当額を販売事業者へ支払い、その金額を後から消費者から回収する仕組みになれば、「信用購入あっせん」に該当する可能性があります。
経済産業省も、契約形態そのものではなく取引構成によって判断され、金銭消費貸借契約という形式を採っていても、一定の場合には「個別信用購入あっせん」に該当して割賦販売法の適用を受ける場合があると説明しています。 経済産業省
つまり、契約書のタイトルや「自社ローン」というサービス名称だけで法律上の区分が決まるわけではありません。
自社割賦だから規制がない、という意味ではありません
ここも非常に重要です。
「金融庁の管轄ではないのであれば、自由に自社ローンを提供できるのではないか」
ということではありません。
自社割賦についても、取引内容によって割賦販売法をはじめとする各種法令への対応が必要になります。
経済産業省の2024年公表資料では、割賦販売法上の「割賦販売」について、基本的な割賦要件を「2カ月以上かつ3回払い以上」として整理しています。 経済産業省
また、取り扱う商品・役務、契約方法、販売方法などによっては、特定商取引法や消費者契約法など、別の法律についても確認する必要があります。
したがって、
「貸金業法の対象ではない」=「法律上の規制がない」
ではありません。
これは自社ローン事業を構築する際に特に注意したいポイントです。
自社ローン事業では「契約」と「システム」の両方が重要
自社ローン事業を開始すると、通常の一括販売とは異なる管理が必要になります。
例えば、
申込 → 審査 → 契約 → 請求 → 入金 → 未入金管理 → 回収 → 契約完了
という長期間の管理が発生します。
契約数が数十件程度であれば表計算ソフトなどで管理できる場合もありますが、数百件、数千件と増えていけば、契約ごとの支払回数、請求予定日、入金状況、残債などを正確に管理する必要があります。
そのため、自社ローン事業では単に「分割払いを導入する」だけではなく、
契約設計と業務フローを整理したうえで、それを正確に管理できるシステム環境を構築すること
が重要になります。
当社では、自社ローン・自社割賦事業に必要となる、
申込・審査管理
契約・請求管理
入金・回収管理
といった一連の業務を管理する自社ローンシステムを提供しています。
2017年のサービス開始以降、自社ローン・自社割賦事業の運用に携わりながら、実際の現場で必要となる機能の開発・改善を継続しています。
まとめ|自社ローンは「金融」ではなく「販売信用」として考える
「自社ローンは金融庁と経済産業省のどちらの管轄なのか?」
この質問に対する基本的な回答は、
一般的な自社ローン(自社割賦)は、経済産業省が所管する「割賦販売法」の領域です。
一方、利用者へ金銭そのものを貸し付ける事業であれば、貸金業法など金融庁所管の制度を検討する必要があります。
重要なのは「自社ローン」というサービス名称ではありません。
「誰が商品を販売するのか」
「誰が代金を立て替えるのか」
「消費者は誰に支払うのか」
「金銭の貸付けが行われているのか」
といった実際の取引構造によって、適用される法律を判断する必要があります。
自社ローンは、金融機関のローンを単純に自社で行うものではなく、商品・サービスを提供する事業者自身が販売信用を提供する仕組みとして設計することが基本となります。
そのため、新たに自社ローン・自社割賦事業を立ち上げる場合には、システムだけを先行して導入するのではなく、契約内容、販売方法、請求方法、入金管理、未収金管理まで含めた全体の業務設計を行うことが重要です。
出典・確認日:2026年9月6日
経済産業省「割賦販売法(後払信用)の概要」ほか 経済産業省
金融庁「貸金業法について」「貸金業者向けの総合的な監督指針」 金融庁
※本記事は制度の一般的な説明を目的としたもので、個別案件についての法律判断・法律相談を行うものではありません。実際に自社ローン・自社割賦サービスを開始する際には、具体的な契約・取引スキームについて弁護士等の専門家および必要に応じて所管官庁へ確認することを推奨します。